素材/特殊画材紙(絵画のような仕上がりです)
catacomb(カタコンベ)は、死者を葬る為に使われた地下の洞窟、「地下の墓所」を意味します。そこは、人々の深い祈りの場であり、本当の意味での死の豊かさが、近代化から秘匿された一つの聖地でもありました。
この作品は、お祖母ちゃんの死をきっかけに生まれました。それは、「人は何故祈るのだろうか」ということです。彼女の葬儀のとき、訪れた多くの古い友人の方々が例外なく、彼女に向かってお祈りしていた姿に、僕にひどくショックを受けました。当初、その誠実な友人たちの祈りの意味が分からず、また祈りを捧げられている亡き祖母の存在に、想像だに出来ない底知れぬ闇と深い畏れを抱きました。同時に、あたたかい夜の空気に包まれていくような、不思議な安心感もありました。彼女の死の空間に、人間の持つ本質的な知性が立ち現れ、「人は美しいんだ」と神妙に納得したことを思い出します。
この作品には死の世界の再発見、本来の「祈り」の復興が、すでに創作を始める時点で包括されているのではないかと感じています。
僕は壮大なことをやってやろう、という心算では全くありません。もう会うことのできない、僕をひたすら愛してくれた一人の女性のことを、彼女が自らの死をもって気付かせてくれた大切なものを、ずっと忘れずにいたいだけなのです。