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小学校4年の頃、名古屋に住んでいた私は、夏休みに横浜の従姉弟の家へ遊びに行きました。まだ少女の私にとって新幹線の旅は、めまぐるしく変わる車窓の風景がとても楽しみでした。そこは広大な田園地帯で、空に広がる濃灰色の雨雲が強風に逆巻きながら、すごい速さで地平線の向こうへ流れていくのです。青々とした稲穂も草花もその絶大な力に抗いきれず倒されていくのを見て、天上にすべてを司る大きなものの存在を感じ、なぜか気持ちが澄み渡るような気がしました
佐藤智美
TOMOMI SATO
版画 紙