224.8x135.3cm、版画とは思えない大きさに度肝を抜かれる。作家自身が撮影した写真を組み合わせコラージュ的に画面構成する方法はお手の物だ。個々の写真作品のクオリティも極めて高いが、それらの意外な組み合わせとそれぞれの柔らかなモノクロームの色彩は巨匠ならではの感がある。全体にセピアがかった落ち着いた色調は歴史的なタイトルとあわせて時代の変遷を物語るのに相応しい。現代美術と呼ぶにはあまりにシックな表現かもしれない。古色を帯びていながら、新鮮なイメージが広がるところは不思議だ。80歳を超え健康が心配され、しばらく制作活動からも離れているのは残念だが、アメリカ美術史上偉大な画家の版画の中でも価値ある1点を所有する喜びは大きい。一時期は200万円を優に越えていたものだが、リーズナブルな価格となった。(執筆:広本伸幸)
ULAE(Universal Limited Art Editions※)制作。
※ 1957年にタチアナ・グロスマンによってニューヨーク州ロングアイランド、ウェスト・アイスリップに設立された、アメリカ現代版画を代表する工房の一つ。