現代社会に横たわる問題を鮮やかに切り取り提示してきた真摯な写真家・伊奈英次。
本作は、産業廃棄物を撮影したシリーズ、「WASTE」からの一作。本シリーズの被写体は、廃物の山、ねじっくれた針金、絡み付いた電気コード、ドラム缶に水がたまり内側にびっしりと吹き出した錆、膨大な数の空瓶など、日本の生産消費システムが作り出した産業廃棄物の残骸「風景」である。人の生活に隷属する目的から離れたモノの集積が放つ美しい存在感は圧巻ともいえよう。
「同種類の廃棄物が大量に投棄されている現場は圧倒的な迫力を醸し出し、さながら古戦場のような錯覚におちいる。殺戮と破壊のかぎりをつくしたあとのように。しかし、写真の対象として廃棄物を見つめた場合、限りなく魅力に満ちた被写体に変貌する。このギャプが、写真に対する私の麻薬的快感を増幅させる。原爆の閃光が倫理を超えて美しいと感じるように。キタナイモノがキレイに撮れるという単純なパラドックスは、写真という映像メディアに課せられた原罪のような役目を担わされている。四角いフレ-ムで切り取られたイメ-ジは、嘘と真実の拮抗するバランスによって複雑なリアリティを構成する」(伊奈英次)#script tag escaped#flgDispRecommend=false;#script tag escaped#