酸化反応の現象は、人間や生物そのものの老いや腐敗を感じさせる。色あざやかに水分を湛えている華よりも、枯れていく過程にエロティックな妖艶さと、静かな美しさを感じる。それは人も皆同じであり、人は産まれたその瞬間から死へと生き始めるからである。日本では彼岸に咲く、彼岸花(死人花)は別名を「曼珠沙華」という。「まんじゅしゃげ」とはサンスクリット語で、天界に咲く花という意味で、めでたい出来事の兆しに赤い花が天から降ってくるという仏教の経典からきている。
自身の制作過程で、草木染めの柿渋と鉄媒染からヒントを得て(柿渋の赤茶から、墨色へと変化する化学反応)、柿渋で描いた絵画を錆びさせることによってタンニンと鉄を反応させ、赤錆色と黒色による、地と図で絵を描いていくという新しい技法が生まれる。(柿渋とは平安時代から使われていたとされる天然塗料で、木、紙、布などに塗ると不溶性の強い被膜により、防水、防腐、防虫効果効果がある。)