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お墓に供えてある色とりどりの枯れていく華は、どうしてあんなにも妖艶なのか。小さい頃、お墓を見るのが怖かったのはそこに供えてある華の色気に、何か見てはいけないものを見てしまったような、な艶かしいものに思えたからだ。酸化反応の現象は、人間や生物そのものの老いや腐敗を感じさせる。色あざやかに水分を湛えている華よりも、枯れていく過程にエロティックで静かな美しさを感じる。Dead flowersシリーズの初期で、モチーフは菊である。
伊藤咲穂
Sakuho Ito
素材:和紙、膠、顔彩/技法:和紙に柿渋でモチーフを描いた後、長時間錆びさせ腐食させ酸化反応させることによって画面に花を浮かび上がらせる。浮き出た花のモチーフを錆の形に沿って着彩。
mixed media
Japanese paper artist (Sabi washi錆和紙) 1989 島根県浜田市 誕生 2012 作家活動 2014 武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 テキスタイル専攻 卒業 現在 東京都、島根県を拠点とし、作家活動 人間とマテリアルについて考えるとき、日本人は古来から神、そして紙、と共に生活をしてきました。中国より4~5世紀ごろに伝えられた紙漉きの技術は、主に〔札、人型、写経〕などに用いられ、神聖な素材として大切にされましたが、今や生活必需品としてではなく、工芸品としての価値が高まり、紙漉きは文化として、ユネスコの世界無形文化遺産として登録されています。 日本ではしばしば、「和紙」は古典的な素材として印象強くありますが、実は素材として常に単一的で、変容性を持った素材なのです。物体としての作品を作るとき、マテリアルとの関わりは、必ず強い連帯関係を生みだします。それは、和紙のもつ古い歴史と日本文化が、現代に生きる自身の記憶と社会の変動を、交互に行き交うからに他なりません。和紙を古く新たな素材として捉え、表現しています。