キャンバスを支持体にし、糸やラインストーン、ビーズ、スパンコールなどを使用し、絵を制作する。
空間には見えないあらゆるものが存在している。空気、電波など誰もが信じているものの他に視線、気、粒子などがある。日常的には深く考える機会が少ないこれらが及ぼす影響は、制作するときは比重が大きくなる。この存在を軽んじることは作品完成にとって大切なものが抜け落ちていると感じる。構成要素は私の頭の中にある映像、直感、場の情報などが私の体を通して作品となる。刺繍はそれらを具現化する過程で、見えないものが作品に宿っていくのを身体感覚として感じながら創造する。昔は子供を魔から守るため親が子供の着物に魔よけの刺繍を施す背守りという習慣があったというが、刺繍にはそのような力が宿ると信じられていたのだ。私自身一針一針作品を縫うときにそれは感じるため、良いものをそこに込めることを意識して制作している。