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高校時代はよく学校の帰り道にある図書館横の公園のベンチで借りた本を読んでいた。それが唯一の娯楽という地味な高校生だった。
ちょくちょくいるので、たまに子供に無邪気に話しかけられたりした。
「おにいちゃん、なんしょん?」
「なんもしょうらんよ、本読んどるだけじゃ」
「本読んだら偉ろうなるんじゃろ? お兄ちゃんはなんなるん?」
「まだ決めとらん、おめえはなんなるん?」
「わしゃ野球選手じゃ」
まあそれは無理でしょうと、それを聞いた瞬間に思ったのを覚えている。なんでもなれるって思っていた時期を過ぎ、なににならなれるんだろうと考えていたそんな高校時代。
それでもその時の公園は気持ちのいい場所だった。でも東京に出てからは、公園はのんびりできない場所になった。
それは昼間から公園にいるとなんとも言えない罪悪感を感じたからだ。公園を通り過ぎる人に、お前はブラブラしている、ちゃんとしてない人だと思われている気がしていた。だから長らく公園から遠ざかっていた。

だからアパートの目の前の公園で食べようと思って、夜の10時過ぎの誰もいない公園に向かった。ブランコに座って少し揺らしながら、お弁当を開けて、お箸を割った瞬間、お弁当がベトッと地面に落ちた。
砂だらけになったご飯を見ながら、涙が込み上げてきて、普段なら泣かないのにその時は色んな気持ちが込み上げて来て本当に泣いたのを覚えている。ご飯は食べられないで寂しさに食べられていたそんな東京時代。
そしてアムスに来てから、散歩がてら漫画とポットに珈琲を入れてよく公園に行くようになった。天気のいい日のアムスの公園には「太陽はごちそうでしょう!」の空気が満ち満ちている。
働き盛りだろうが、子供だろうが、老人だろうが、みんなただ太陽の光を楽しむためだけに公園に来ている。だからぼくもゆっくり芝生の上で寝っ転がって「ハチミツとクローバー」が心置きなく読める。
ある日、芝生の上でカメラバックを枕に、青空ってこんなに綺麗で素敵だったんですねと思いながら見上げていたら、すうっと体が軽くなって青空に吸い込まれそうな感じになった瞬間、ぼくは眠りについてしまった。
それからどれだけ寝たかわからないけど、子供の声で起きて、薄目を開けると目の前にはまだ見渡す限りの青空が広がっていた。まるでまだ夢の中にいるようだった。そして飛行機雲がすーっと青空を下から上へ上っていくのが見えた。
2008.8.31


…続きはコラムで

