夏です。夏といえば、夏休み。「偉大な写真」について語るのがこのエッセイの目的でしたが、今回はひと息いれて、「毎日写真」について書いてみることにします。 僕がこのシリーズを撮り始めたのは98年でした。翌年が1999年という面白い数字の年だったので、その年を記録してみようと思ったのです。ノストラダムスの予言では、日本は沈没するはずでした。 子供の頃(70年代の初め)にその話を聞いた時、35歳の自分を想像できずに、ぼんやりもや靄のかかった光景が頭に浮かびました。 ちなみに、その白っぽいスモークをたいたような靄のイメージは、テレビドラマ、たぶん「時をかける少女」(当時は「ラベンダーの香り」とか何とかいうタイトルだったかもしれません)あたりから借用したものだと思います。まだまだテレビの黎明期。いまから見れば幼稚な造りのはずなのに、強く頭に焼き付いてしまうのは、おそろしいことです。 そういえば、「1999年の夏休み」という映画もありました。たぶん80年代の末に撮られた映画で、うかつにも監督の名前を忘れてしまいました。内容もすでにうろ覚えで、確か山奥にある全寮制の名門高校が舞台だったと思います。多くの生徒が親元に帰ってしまった夏休み、様々な事情で学校に残った数名の生徒たちの物語です。設定は男子校なのですが、演じているのはみな女の子でした。おぼつかない身ぶりで「えい!」とか言いながら取っ組み合いの喧嘩をする場面がなんともエロティックな映画でした。 そんなふうに、2000年代に入る前は「1999年」が人気だったのです。「世紀末」という言葉も当時はそれなりに流行っていた気がします。その1999年がついにやってくるのです。子供の頃には想像もつかなかったその年。 1999年は一度きりしかありません。撮り直しはきかないのです。失敗して後悔しないよう、思い立った翌日からさっそく練習も兼ねて撮影を始めました。98年の初夏でした。 別に特別な出来事を期待していたわけではありません(事実、日本は沈没しなかったし、個人的にも事件に見舞われることはありませんでした)。むしろ、「特別な」この年が何事もないあたりまえの年だったということを記録することに意味がある、漠然とそう感じていました。 (あぁ、今月もまた一回で完結できませんでした。余談が多いのかなあ‥‥。つづく) タカのリュウダイ/'07/08/10 次回のUP日は、9月7日を予定 ※エッセイ中に掲載の作品は全て販売しております。
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