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佐内正史×@GALLERY TAGBOAT
インタビュー 写真家・佐内正史に、街を歩きながら話を聞いた
シャッターを押すのに理由はいらない気がしているんだよね。よくそういう人いるよね。何かの対象を撮りに行くとか、どこそこの場所で撮るとか。でも自分の中ではそういう感情はあんまりない。何か撮らなきゃいけないと感じたから撮ってるけど、その感じというのは対象ではないんだよ。

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―― このあたりに住んでいたんですよね?

佐内 「あまり特徴のないところに住むのが好きって言うか、高円寺とか吉祥寺とかじゃなくて荻窪。今は幡ヶ谷なんだけど、それも新宿じゃなくて幡ヶ谷。なんだろう?それはちょっと自分に問題があるんじゃないかと思う。」

―― 問題? どんな問題?

佐内 「何と言うのかな?幸せになりたくない病と言うか。」

―― 満たされてしまったら嫌みたいな?

佐内 「うん。写真に影響が出ちゃうから。」



―― よく「単純に撮る」ということをおっしゃっていますが、それはどういうことなんですか。

佐内 「それはもう楽しいとかいうことでもなくて、生活になっているということ。どう撮ろうとかいちいち考えない。撮るのが普通だから。生活になっていないとこれをこう撮ったら面白いだろうとか、対象に向かって行ったりしちゃうんだよね。対象物にひっぱら れた写真になってしまう。そうなるとスケールが小さくなってきちゃう。もうちょっと写真に対して神聖な気持ちでいたい。今世界に溢れている写真は対象をどう撮るかの写真だから、結構くだらないんだよね。写真家というのはもっと神聖な仕事だと思っている。



写真集「生きている」より
写真集「生きている」より



―― 何を撮ろうというのでしょう。

佐内 「何かを目当てにして撮りに行くこと、行ったことは一度もない。シャッター押すのに理由はいらない気がしているんだよね、いつも。でも、よくそういう人いるよね。何かそこの場所で撮るとか、その対象を撮りにいくと言うか。そういう感情はあんまりない。自分の中ではそういう写真に興味が無い。それは写真と言うよりもその対象を撮りに行くのがテーマなのかなと思っちゃう。

何か撮らなきゃいけないと感じるから撮るけど、その感じというのは対象ではないんだよ。そこにある全体から出て来る何かのサインっていうか。それが何なのかは謎のままなんだけど。」


「生きている」表紙
「生きている」表紙



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